岩政大樹が書く「勝負強さ」にある表裏
理想的なサッカーを貫くこと、それを捨てること
「現役目線」――サッカー選手、岩政大樹が書き下ろす、サッカーの常識への挑戦
自分たちのスタイルを手放すというスタイル
この2試合を振り返って思うことは、勝負所の試合に勝つ確率を上げるためには、「自分たちのスタイル」と呼べるものを「表」と「裏」に用意しておくことが大切だということです。僕たちには、主導権を握り、相手を圧倒するという「表」の戦い方があり、逆に相手や流れによっては守備から入り、我慢をしながら流れを引き込んでいく「裏」の戦い方がありました。
試合の最初は、できるだけボールを保持してリズムを取り、相手を押し込んで圧倒しようとします。ガンバ戦のようにそれで押し切ることができれば、まさに理想的です。
しかし、大事な試合では硬さもあり、相手も同じようなモチベーションで来れば、それはそんなに簡単ではありません。レッズ戦のように、往々にして、いつものリズムを取れない試合の方が多いと思います。
そうしたときに、もし自分たちがリズムをつかめないようなら一度スタイルを変えてでも我慢する、というプランも織り込んでおくことが必要になります。
これは、下がるとか逃げるとかということではありません。
大事なことは、戦い方に多様性をもっておくことなのだろうと思います。そのことにより、自分たちの理想的な展開にならないときでも、慌てることなく勝ち筋を見つけることができ、プレッシャーのかかる状況でも常に自分たちのリズムにもっていくことができます。
勝負所の試合となると、自分たちの一番いい試合でぶつかっていこうと考えがちです。それは選手として当然のことで、正しいことだと思います。ただ、理想にこだわり過ぎて、目的が勝つことから外れてしまってはいけません。このような時、自分たちのいい時のスタイルにこだわらないことは、こだわることより難しいものです。
しかし、勝負強くあるためには、自分たちや自分たちの戦い方にプライドを持つことより、勝つことこそがプライドであることが大事なのだと思います。